専属執事は愛するお嬢様を手に入れたい
◇
部屋に戻り、エリスはソファの上で膝を抱えて座り込んだ。突然のことに頭が追いつかない。考えてどうにかなることではないことはわかっている、もうこれはほぼ決定したことなのだ。それでも、認めたくないという思いと、両親をこれ以上悲しませたくないという思いがせめぎ合う。
ふと、近くから良い香りがする。静かに顔を上げると、目の前のテーブルに紅茶が置かれており、近くにはいつの間にかディルがいた。
「ディル……」
「エリス様が好きな紅茶です。飲むと少しは落ち着くと思いますよ」
そう言われて、エリスはソファに座りなおすと紅茶を口にした。飲んだのは一口だけだが、ふんわりといい香りが口の中に広がっていく。紅茶の暖かさも広がって、心がだんだんと優しくほぐれていくのが分かる。
ポロ、とエリスの両目から涙が零れ落ちる。
「エリス様……」
静かにディルがエリスの横に座ると、そっとエリスを抱きしめた。昔から知っているディルの匂いに包まれると、心の糸がぷつりと切れたようにエリスは泣き始めた。
「ディル、嫌なの。この結婚をしなければいけないって、わかってる。でも……でも……」
そう言って泣くエリスを、ディルはぎゅっと抱きしめた。エリスの頭上から、静かなため息が聞こえる。それから、ディルはそっとエリスの両肩を掴んでエリスの顔を覗き込んだ。
「エリス様、婚約の顔合わせは来週でしたよね。それまで、お暇いとまをいただきます」
「……え?」
急なことにエリスは驚いてディルの顔を見つめる。一番側にいてほしい時に、暇をもらいたいと言われてエリスの心は苦しくてたまらない。
「大丈夫です、エリス様には俺がいます。信じて待っててくれませんか」
エリスはディルの言っている意味が全く分からない。だが、ディルは本当に顔合わせまでの間、エリスの前から姿を消した。
部屋に戻り、エリスはソファの上で膝を抱えて座り込んだ。突然のことに頭が追いつかない。考えてどうにかなることではないことはわかっている、もうこれはほぼ決定したことなのだ。それでも、認めたくないという思いと、両親をこれ以上悲しませたくないという思いがせめぎ合う。
ふと、近くから良い香りがする。静かに顔を上げると、目の前のテーブルに紅茶が置かれており、近くにはいつの間にかディルがいた。
「ディル……」
「エリス様が好きな紅茶です。飲むと少しは落ち着くと思いますよ」
そう言われて、エリスはソファに座りなおすと紅茶を口にした。飲んだのは一口だけだが、ふんわりといい香りが口の中に広がっていく。紅茶の暖かさも広がって、心がだんだんと優しくほぐれていくのが分かる。
ポロ、とエリスの両目から涙が零れ落ちる。
「エリス様……」
静かにディルがエリスの横に座ると、そっとエリスを抱きしめた。昔から知っているディルの匂いに包まれると、心の糸がぷつりと切れたようにエリスは泣き始めた。
「ディル、嫌なの。この結婚をしなければいけないって、わかってる。でも……でも……」
そう言って泣くエリスを、ディルはぎゅっと抱きしめた。エリスの頭上から、静かなため息が聞こえる。それから、ディルはそっとエリスの両肩を掴んでエリスの顔を覗き込んだ。
「エリス様、婚約の顔合わせは来週でしたよね。それまで、お暇いとまをいただきます」
「……え?」
急なことにエリスは驚いてディルの顔を見つめる。一番側にいてほしい時に、暇をもらいたいと言われてエリスの心は苦しくてたまらない。
「大丈夫です、エリス様には俺がいます。信じて待っててくれませんか」
エリスはディルの言っている意味が全く分からない。だが、ディルは本当に顔合わせまでの間、エリスの前から姿を消した。