小さな恋のトライアングル
真美と潤は都の電話を待ちながら、改めて岳に目をやった。

「いい人そうですよね?お姉さんのお相手の方。上手くいくといいな」
「ああ、そうだな。家庭の事情もある中、5年半も姉貴のことを探して……。並大抵の覚悟ではなかったと思う」
「そうですよね。お姉さんも、その人のことを嫌いになって別れた訳ではないですし。がっくんが自然にその人と仲良くなって、いつか親子だって認識出来たらいいな。少しずつ、家族の時間を増やしていって欲しいです。お姉さんも彼も、辛い思いをした分、幸せになって欲しい」
「ああ」

やがて都がそっとリビングに戻って来た。

「どうだった?」
「うん。彼もお父さん達も、それでいいって」
「そうか!じゃあ、5人で帰ろう」
「うん、よろしくお願いします。それと……」

言いにくそうに都は顔をしかめる。

「なに?」
「うん、あのね。彼が先に潤と真美ちゃんに挨拶したいって言うの」
「ああ、なるほど。それもそうか」
「でね、今日って12月30日じゃない?明日は大晦日で明後日には帰省することになる。だから、急なんだけど、これから夕食をご一緒させてもらえませんか?だって」

ええー?!と潤と真美は驚く。

「こ、これから?」
「うん。やっぱり嫌よね?心の準備とかあるし。ごめん、私から断るね」

そう言って再び電話をかけに行こうとする都を、真美が止めた。

「お姉さん、私は大丈夫です。潤さんさえよければ」
「え、ほんと?」

すると潤も頷いた。

「俺もいいよ。前もって直接聞いておきたいことあるし」
「ありがとう、二人とも。じゃあ、そう返事するわね」

そして岳が起きるのを待ってから、潤の車で都達を自宅マンションに送り届けた。

その足で真美は自分のマンションにも立ち寄ってもらう。

これから都の相手の男性と会うのに、今履いているジーンズのままという訳にはいかない。

元旦に潤の実家に行く時の服も用意してから、潤の運転で待ち合わせ場所のホテルへと向かった。
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