小さな恋のトライアングル
「とっても美味しいです!このヴィシソワーズ、そら豆が入ってますか?」

ダイニングルームで皆でランチを囲むと、真美は並べられた料理に感激した。

「よく分かるわね、真美ちゃん。そうなの、そら豆のヴィシソワーズよ。冬だけど、岳がこの冷たいスープがお気に入りでね。毎回帰省するたびに、作って!ってせがまれるの」
「そうなのですね。美味しいもんね?がっくん。生クリームも入ってますか?私、ミキサーで作るんですけど、ここまでなめらかにならないです」
「ああ、うちではミキサーのあとに裏ごししてるのよ」
「なるほど!今度私もやってみます」
「嬉しいわ、真美ちゃんとお料理の話が出来るなんて。都なんて、さっぱりよ」

母親に視線を向けられて、都は思わず首をすくめる。
その隣で岳が得意気に胸を反らした。

「まみのりょうり、めちゃくちゃおいしいんだぜ?」
「ええ?岳、真美ちゃんに手料理作ってもらったの?」
「うん。りょうりもおしえてくれた。ギョウザパックンとかー、おすしパタパタとかー、てまきまきまきとか。ソーセージきったり、ニンジンをおほしさまにもできるんだぜ?」
「あら!まあ、真美ちゃんありがとう。都が出来ないもんだから、きっと岳も料理が苦手になっちゃうわって思ってたのに」

真美は、いえいえ!と手を振って否定する。

「がっくんがお手伝いしてくれるんです。私がキッチンに立つと必ず『なんかてつだう』って言ってくれて。いつもおうちでママのお手伝いしてるからなんでしょうね。優しいもんね?がっくん」
「まあな。おとこは、かおじゃないから」
「えー、がっくんはお顔もかっこいいよ。優しくてかっこ良くて、とってもいい子」
「まみ、あんまりいうと、てれるから」
「ふふっ、分かった。ちょっとだけにしておくね」

二人で顔を見合わせて微笑む岳と真美に、両親は小声で囁き合った。

「すごいな、ラブラブだ」
「本当に。もしかして真美ちゃんも、潤より岳の方がいいんじゃないかしら?」
「えー?それならどっちを応援すればいいんだ?」
「困ったわねえ。でもやっぱり息子より孫の方が可愛いわ」
「じゃあ真美ちゃんは、岳と結婚するのか?そしたら潤は?」
「まあ、捨てられる、ってことになるわね」

憐れむような視線を向けられて、潤は両親に、ん?と首をひねる。

「どうかしたか?」
「うん、まあ、その、なんだ。潤、気持ちをしっかりな」
「そうよ。ひとり暮らしで生涯過ごすのが辛くなったら、ここに帰って来て私達を手伝ってくれていいんだからね」

はいー?と潤は思い切り眉間にしわを寄せていた。
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