小さな恋のトライアングル
「遅くなってすみません!岳くんのお迎えに来ました望月と申します」

保育園のインターフォンを鳴らしてそう言うと「はーい、どうぞ」と声がして、カチャッとロックが解除される。

今どきのセキュリティーってすごいな、と感心しながら、真美は門を開けて中に入った。

チャイルドロックのついたドアを開けると、広いエントランスホールでポツンと先生と一緒に座っている岳がいた。

「岳くん!ごめんね、遅くなって」
「べつにいいよ。じゅん、しごとなんだろ?」
「あ、うん。そうなの」

令和の4歳児って、みんなこんなに大人びた口調なの?と苦笑いを浮かべていると、岳は隣にいる先生に口を開いた。

「じゅんのかのじょ。まみ」

ふがっ?!と真美は不意打ちを食らって変な声を出す。

「あ、望月 真美さんですね?五十嵐さんからお電話ありました。申し訳ないのですが、お名前が確認出来るものを見せていただけますか?」
「はい」

先生に言われて、真美は財布から運転免許証を取り出した。

「ありがとうございます。確認いたしました。それでは、岳くんをよろしくお願いします」
「はい、お世話になりました。岳くん、行こうか。忘れ物はない?」

手を繋ぐと、岳は真美を見上げる。

「まみ。わすれものは、わすれたからわすれものだぞ?いまおもいだしたら、わすれものじゃない」
「ほえー、なんて名言。どこで習ったの?」
「ママがいつもいってる」
「そうなんだ!ママ、頭いいねー」

岳が靴を履き替えるのを見守り、最後に二人で先生を振り返った。

「先生、ありがとうございました」
「せんせい、またね」

「はい、岳くんをよろしくお願いします。がっくん、また明日ね!」

真美は岳と手を繋いで保育園をあとにした。
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