小さな恋のトライアングル
「そうだったんですか。そんなことが……」

翌日の日曜。
潤と岳が樹のマンションに遊びに行き、真美は都の部屋で昨日の出来事を聞いて胸を詰まらせていた。

「なんだか不思議ね。誰も一度も岳に、樹のことをパパだと言ってないのにね」
「そうですよね。きっとがっくんは血の繋がりとか関係なく、樹さんの人柄そのものを、自分の父親だと感じたんでしょうね」
「ふふっ、そうね。いつどうやって父親だと打ち明けようか、なんて悩む必要もなくなったわ」
「本当に。子どもってすごいですね。何よりも、樹さんとがっくんが素敵な関係を築けたからだと思います」
「うん。色々と本当にありがとう、真美ちゃん」
「とんでもない、私なんて何も。こちらこそ、幸せな気持ちにさせてもらってます」

真美がそう言うと都はにっこり笑い、綺麗にラッピングされた包みを差し出した。

「はい、これ。真美ちゃんのお誕生日プレゼント。当日は潤が片時も真美ちゃんを離さないでしょうから、先に渡しておくわね」
「えっ!」

思いも寄らなかった突然の贈り物に、真美は驚きながら受け取る。

「ありがとうございます。いただいてもいいのでしょうか?」
「もちろん!真美ちゃんの為に作ったの。開けてみて」
「私の為……?」

呟いてからハッとする。

もしや、と顔を上げると、都は微笑んで頷いた。

真美はそっとリボンを解いてから箱を開けてみた。

入っていたのはローズピンクのビロードのジュエリーケース。

もう一度顔を上げて都を見てから、真美はケースを開く。

「なんて綺麗……」

美しく煌めくネックレスとブレスレットに、思わず感嘆のため息をつくと、都が身を乗り出して説明した。

「ネックレスもブレスレットも同じデザインなの。真ん中のピンクのストーンはモルガナイト。よく見るとハートシェイプなのよ。左右にはダイヤモンド。どちらも真美ちゃんの誕生石ね。似合うと思うんだ。着けてみて?」
「え、でも……。こんな高価なものを」
「だーかーら、真美ちゃんが受け取ってくれないと、ドブ行きなのよ?私がデザインしたジュエリーを、捨てちゃわないで」
「そんな!まさか」
「じゃあ、着けてみて。ね?」

頷いてそっと手に取った真美の目に、早くも涙が浮かぶ。

首の後ろに手を回してネックレスを着けると、左手にブレスレットも着けた。

「わあ……、可愛い」

思わず手で触れて微笑むと、都も嬉しそうに頷いた。

「うん、やっぱりよく似合ってる。真美ちゃんの心の温かさと純粋さを思い浮かべながらデザインしたの」
「ありがとうございます、お姉さん。一生の宝物にします。これを着けていると、勇気がもらえる気がします」
「ええ。真美ちゃんはそのジュエリーに相応しい、優しくて凛とした女性よ。私はずっと真美ちゃんの味方だからね」
「はい、ありがとうございます」

涙を拭い、真美は輝くような笑顔を見せた。
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