小さな恋のトライアングル
気を取り直してゾウの絵を描き始めると、真美も鼻歌を歌いながらキリンの絵を描いている。

「キリンの親子~、母さんキリンと子どものキリン~」
「まみ、そのうた、なんのうた?」
「キリンの歌だよ。私が作ったの」
「いつ?」
「ん?今」
「まみって……、どくとくだな」
「そう?ふふっ、ありがと、がっくん」

いや、ほめてないけど……と思いつつ、岳もゾウの絵に子どものゾウを付け加えた。

「まみとじゅんは、こどもつくらないのか?」

ピッキーン……

その場の空気が一瞬にして凍りつく。

真美の手からポトリとクレヨンが落ちた。

潤も、そして樹も固まっている。

かろうじて都が口を開いた。

「えーっと、岳?子どもって、どうやって作るんだっけ?」
「しらないの?ママ。こうのとりさんに、おてがみかくんだぜ?こどもをつくりたいですって」
「ああ!そうか、そうだったね。そしたらこうのとりさんが、赤ちゃんを運んできてくれるんだよね」
「ちがうって。ママもおなかのなかに、あかちゃんのたまごをいれてくれるんだ」
「なるほど!そうだったわ。それからママのお腹の中で大きくなるんだよねー」
「うん。まみもじゅんとおてがみかいたら?だって、まみ、あかちゃんほしいだろ?おれも、まみとじゅんのあかちゃん、みてみたい」

都はまだ固まったままの真美と潤にチラリと目を向けると、岳の正面から身を乗り出した。

「ね、岳。真美ちゃんと潤はまだ結婚してないから、お手紙を書かないんだと思うよ」
「そうなんだ。じゃあ、はやくけっこんすればいいのに」
「岳は、真美ちゃんが潤と結婚してもいいの?」
「うーん……。おれはいやだ。だけど、まみはじゅんがいいとおもう」

えっ……と都は言葉に詰まる。

「おれは、まみをだっこしてあげられないから。まみのあしも、なおしてあげられない。だからじゅんが、まみをまもってほしい」

都が潤に目を向けると、潤は感極まったように目を潤ませていた。

「ほら、潤」

都はそんな潤の手を引いて、岳の前に座らせる。

潤は大きく息を吸ってから、岳に話し始めた。
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