小さな恋のトライアングル
その日の帰り道。

真美は若菜と紗絵の言葉を思い出しながら電車に揺られていた。

(若菜ちゃんは純粋に思ったことを言ってくれるし、紗絵さんも私を褒めてくれてるんだろうけど……)

そう分かっていても、真美は少なからずショックを受けていた。

(やっぱり近寄りがたいって思われてるのかな?私って)

それは子どもの頃から薄々感じていたことだった。

クラス替えをする度に、人より友達が出来るのが遅い。

遠足や修学旅行でグループを作る時、なんとなくどこにも入りづらい。

人見知りな性格だという自覚もあり、初対面の人に自分から話しかけたりは出来ない。

いつも「望月さん」と名字で呼ばれ、下の名前で呼んでくれる友達はごくわずかだった。

それでもいい。
友達の多さは関係ない。
本当に大切に思える人がいてくれたら、それでいい。

そう自分に言い聞かせていた。

大学に入ると、サークルの2歳上の先輩からつき合って欲しいと言われ、悩んだ末に、はいと返事をした。

大切にされていたと思う。
けれど周囲の女の子のように甘えたり、可愛らしく振る舞うことが出来なくて、やがて彼から別れを切り出された。

失恋とは違う、何とも言えない悲しさ。
自分は普通じゃないのだ。
恋人として、というより、人としてつき合えないと言われている気がした。

(職場ではがんばって明るく振る舞うように心がけてるから、今のところ上手くいってると思う。だけど本音を言うと、無理して疲れてるかも。もっと自然に何でも話せる相手がいてくれたらな)

一人の方が気が楽だしこのままでも構わない、という気持ちと、やっぱり寂しい、という気持ちが入り混じる。

(若菜ちゃんの言うように、合コンを楽しめるようになれば変わるかな?でも合コンなんてその場から浮いちゃって、絶対に楽しめそうにない。逆にまた自己嫌悪に陥りそう)

はあ、と思わずため息をついた時、最寄り駅に着いて真美は電車を降りた。
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