小さな恋のトライアングル
「ちょいちょいちょいー、お二人さん!」

ようやく涙が落ち着き、会議室を出たところで、またしても平木に声をかけられた。

「どうしちゃったのかなー?前回に続いて今回も二人切り!これはもう見逃せません……って、ええ?!望月ちゃん、ひょっとして泣いた?」

涙は拭いたものの、どうやら目が赤くなっていたらしい。
真美は慌てて顔を伏せる。

「いえ、違うんです」
「嘘だよ。泣いたでしょ?どうかしたの?潤にパワハラされたとか?」
「いえ!とんでもない。本当に違いますから。あの、では私、仕事に戻りますね。失礼します」

お辞儀をすると、真美はくるりと背を向けて小走りで立ち去る。

その後ろ姿を見送ってから、平木は潤に向き直った。

「おい、潤。さすがにまずくないか?見かけたのが俺だったから良かったけど、別の誰かに見られたら、部下を泣かせた上司ってハラスメント相談窓口に報告されても仕方ないぞ?」
「違う。本当にそんなんじゃないよ」
「じゃあ、なんだ?しかも今回も会議室のドア閉めて二人切りで。はっ、もしかして?!お前、望月ちゃんに告白されて断ったとか?」
「は?!そんな訳あるかよ」
「なら、他に何があるんだよ?望月ちゃん、明らかに泣いてただろ?」

それは、まあ……と潤は言葉を濁す。

「確かに彼女の様子には、いつもと少し違ったところはある。けど本当に、俺との間に何かあった訳じゃない。自分の課のメンバーとして、これからも気にかけておく。お前は心配するな」

そう言ってポンと平木の肩に手をやってから、潤も背を向けて歩き出した。
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