小さな恋のトライアングル
「たっだいまー!」

玄関を入るなり、勢い良く靴を脱いで部屋に上がる岳に、潤は後ろから声をかける。

「ほら、岳!うがいと手洗いは?」
「わかってるー!じゅん、いっつもそればっかり」
「潤じゃない、叔父さんだ」
「えー、おじさんとかおばさんってよばないほうがいいんだぜ?おばさんにも、おねえさんってよんだほうがいいんだよ」

はあー?と潤は呆れて眉間にしわを寄せた。

「岳、どこでそんなこと覚えるんだ?」
「もてるおとこはそうしてるって、けいくんがいってた。コロッケやのおばさんに、おねえさんっていったら、おまけしてくれるって」

がっくりと潤はうなだれる。

「なんなんだ、最近の保育園児は。どんな会話してんだよ?」
「じゅんー、ばんごはん、なに?」

洗面所の前に置いた踏み台に上がりながら、岳が大きな声で聞いてきた。

「え?ああ、さっき商店街で買っておいた……、よりによってコロッケだよ」
「コロッケ?やったー!ちゃんとおまけしてもらった?」
「いや、してもらってない」
「おねえさんって、いわなかったんだろ?」
「うん、まあ」
「だめだよ、じゅん。こんどはちゃんと、おねえさんっていいなよ?」

ガラガラとうがいをしてから、妙にかっこつけた表情で振り返る岳に、潤はため息をついた。
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