小さな恋のトライアングル
その頃会議室の中では、一人残された真美が嬉しそうにカードを手にして笑顔を浮かべていた。

(可愛いカード。楽しみだな、がっくんのおゆうぎ会)

先程、またしても潤に呼ばれて会議室に入ると、潤は照れくさそうに赤いカードを差し出してきた。

「これ、岳からの招待状」

え?とカードの表紙に目をやると、『まみへ』と子どもらしい文字が並び、その下ににっこり笑った女の子の絵が描かれていた。

受け取ってそっと開いてみると、中はおゆうぎ会のプログラムになっていた。

「これって、がっくんのおゆうぎ会ですか?ひょっとして、この間作った王子様の衣装の?」
「ああ。土曜日なんだけど、もしよかったら見に来て欲しいって、岳が」
「え?私が行ってもいいんですか?」
「うん。望月さえよければ」
「もちろんです!行かせてください」
「良かった。じゃあ、また改めて前日にでも連絡する」
「はい!楽しみにしています。がっくんにも、そう伝えてください」

分かった、と頷いて潤はドアへと向かう。
真美はしばらくその場に佇み、じっくりとカードに目を落とした。

プログラムには日時の下に、クラスと演目が書かれている。

(がっくんは4歳だから、この『たいようぐみ』さんかな?わあ、『シンデレラ』だって!がっくん、シンデレラの王子様になるんだ。素敵!)

カードを胸に抱えて、真美はうっとりと宙を見つめる。

(あの衣装着て王子様になるがっくん、かっこいいだろうなー。あー、楽しみ!)

しばらくはニヤニヤが止まらない。

真美は賑やかなドアの外の様子にも気づかず、ひたすら王子様の岳を想像して頬を緩めていた。
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