小さな恋のトライアングル
他に岳がケガをしそうな箇所はないか確かめながら、キッチンを片づけていると、岳がパンツ1枚でリビングに現れた。

「まみー、おふろでた」
「お、良かったね。でも早くお洋服着ないと風邪引いちゃうよ。がっくんの服はどこにあるの?」
「ベッドのへやー」

岳と一緒に寝室に入ると、岳は慣れた様子でクローゼットを開けて、引き出しから服をポイポイと取り出す。

「がっくん、これだとどっちもズボンだよ。上は?」
「あ、そっか。こっち」

引き出しの上段から黒いトレーナーを取り出し、岳はもぞもぞと着る。

「おー、かっこいいね!」
「そう?」
「うん。がっくん、黒似合うよ」
「まあな。おとこはくろのイメージだからな」

ふふっと真美が思わず笑った時、ガチャリとドアが開いて、腰にバスタオルを巻いただけの潤が入って来た。

うわっ!と驚いて、潤は慌ててドアを閉める。

「す、すみません、課長。すぐに出ますね」
「あ、ああ。ごめん。知らなくて」
「いえ、私こそすみません。じゃあ、ドア開けます」

真美はそっとドアを開けて潤がいないのを確かめると、そそくさとリビングに戻った。

(あー、びっくりした。それにしても課長って、あんなにがっしりしてたんだ)

いつも洗練された雰囲気でスーツを着こなしているから、てっきり細身でスタイルがいいと思っていたが、上半身は肩や胸の辺りも筋肉がしっかりついていた……、ような気がした。

(頭の中に残像が……。だめだめ!)

ぽわんと先程の潤の姿が思い出され、慌てて首を振っていると、着替え終わった岳がリビングに入って来るのが見えて我に返る。

「がっくん、ちょっと待って。食器が割れて床に散らばってるの。足で踏んだらケガしちゃうから掃除機かけるね」
「うん、わかった。そうじき、ここ」

岳に教えられた扉を開けて掃除機を取り出すと、ここにいてねと岳に伝えてから、真美はキッチンで掃除機をかけ始めた。

「ん?ああ、ひょっとして皿が割れてた?」

シャツとスラックスに着替えた潤が声をかけてくる。

「はい。課長もちょっと下がっててくださいね。細かい破片が飛び散ってるかもしれませんから」

そのまま真美はリビングも掃除機をかけることにした。
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