小さな恋のトライアングル
「望月、ちょっとだけ会社に顔出してくるわ」

食後のコーヒーを飲むと、潤はソファから立ち上がって真美に声をかけた。

「分かりました。気をつけて行ってきてくださいね」
「ああ。なるべく早く帰ってくる。岳のこと、よろしく頼むな」
「はい、お任せください」
「ありがとう。それから、玄関の合鍵はこれ。食料品はこのタブレットで注文すれば、玄関先まで届けてくれる。地震の影響でいつもより時間はかかると思うけど。なんでも好きなものを頼んで」

ええー、すごい!と真美は驚きつつタブレットを受け取った。

「まみ、おれがつかいかた、おしえてやるからな。おかしは、ここからえらぶの。ジュースはここで、アイスはこれ。プリンはここで……」

おいおいと、岳の様子に潤は苦笑いを浮かべる。

「岳、何のパーティーだよ?まったく」
「ふふ、いいじゃないですか。がっくん、パーティーしようね!」

うん!と岳は嬉しそうに頷く。

「それじゃあ、行ってくる」

スーツの上からコートを着て玄関を出て行く潤を、真美と岳は「いってらっしゃーい!」と笑顔で見送った。
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