小さな恋のトライアングル
「あ、五十嵐くん!わざわざ来てくれたの?」

各駅停車で徐行運転している電車で会社に着くと、ぐちゃぐちゃの部屋の中で紗絵が一人、片付けをしていた。

「ごめん、今までほったらかしで。大丈夫だったか?」
「ええ。課のメンバーはみんな無事よ。ここで一晩過ごして、電車が動き始めてから帰って行ったわ。しばらくは大事な仕事がなければ、なるべく自宅でテレワークにするようにって部長から言われて、各自パソコンを持ち帰ったの。五十嵐くんも持って帰ってね」
「分かった。色々、ありがとうな。あとは俺がやるよ」

そう言って紗絵を帰らせると、潤は片付けをしてから他のオフィスを覗いてみた。

別の部署の部長を見かけ、挨拶をしてから状況報告をする。

「今は東京中の会社が混乱してるから、無理に仕事を進めなくていいよ。しばらくは大きな余震が来るかもしれないから、なるべく社員は出社させない方がいい。基本的にはテレワークで。五十嵐くんもね」
「承知しました。ありがとうございます」

それでは失礼しますとお辞儀してからオフィスに戻り、潤は自分のパソコンと真美のパソコンの両方を鞄に入れてマンションへと急いだ。
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