小さな恋のトライアングル
二人が出かけたあと静まり返った部屋で、潤はパソコンに向かっていた。

(こうまで静かだと、逆にやりづらいな)

いつの間にか賑やかな雰囲気に慣れていたらしい。

岳と真美がいなくなったあとの生活を想像すると、それだけで寂しくなった。

(いかん。大の男が何を気弱になっている)

ずっと気ままにひとり暮らしを楽しんできたのだから、きっとすぐにまた慣れるだろう。

そう思い直して仕事に集中した。

まずは課のメンバーに改めて安否の確認と現在の状況などを報告するよう、一斉にメールを送る。

困っていることがあれば相談するように、会社にはしばらく出社しなくて良い、と付け加えた。

しばらくすると、ポツポツと返信が届く。

皆、自宅で安全に過ごせているようでホッとした。

紗絵とも個別でやり取りし、部長との連絡などを一緒にやる。

そのうちに、『そう言えば……』と紗絵が切り出した。

『あの日、真美だけは先に帰ったから、あの子パソコン会社に置きっぱなしなのよね。メールはスマホからチェックしてるだろうけど、仕事出来なくて困ってるだろうな』

読み終わると、ああ……と潤は頭を抱える。

俺が渡したから大丈夫、と言いたいが、紗絵のことだ。
なんで?いつ?どうやって?と、突っ込みまくられるだろう。

(うーん……。望月が会社に取りに行ったことにするか?それとも、俺が持ち帰って、駅とかで待ち合わせて渡したことにするか)

考えた結果、後者の方がいいだろうと、潤はその旨メールで紗絵に伝えた。
< 63 / 168 >

この作品をシェア

pagetop