小さな恋のトライアングル
「がっくん、速ーい!かけっこ、クラスで1番でしょう?」
公園で岳と駆け回ってから、真美は息を切らしてベンチに座り込む。
「まみ、もうつかれたのかよ?」
「うん。だって、普段走ることなんてないんだもん。信号が点滅した時くらいだよ」
「なんだそれ?まあ、いいや。じゃあジャングルジムしてくる!」
「はーい、がんばってね」
ふう、とベンチにもたれながら、岳がぐんぐんジャングルジムに登って行くのを見守っていると、ポケットの中でスマートフォンが鳴り出した。
取り出してみると、紗絵からの電話だった。
「もしもし、紗絵さん?」
『あ、真美!どう?無事に帰れた?ご家族も大丈夫だった?』
「はい、大丈夫でした。あの日は先に帰らせてくださって、ありがとうございました」
『ううん、無事なら良かった。それでね、他のメンバーはパソコンを持ち帰ったんだけど、真美だけ会社に置いたままだから気になってたんだ。ほら、しばらくは自宅でテレワークになったでしょ?』
あー……と、真美は顔をしかめる。
潤に持って帰って来てもらっていたが、それを紗絵に話す訳にはいかない。
「すみません、近々取りに行きますね」
と言う真美の言葉と
『でも良かったわ、五十嵐くんが……』
と言う紗絵の言葉が重なる。
二人して、ん?と沈黙した。
『真美、五十嵐くんと会ったんじゃないの?』
「え?会ってませんけど……」
そう言ってから、真美はハッとした。
おそらく自分のいない間に、潤と紗絵の間でなんらかのやり取りがあったのだろう。
そこで自分と潤が会ったことになっているのかもしれない。
「あー!そう言えば、会いました。えっと、ちょこっとだけ。あはは」
『あはは?……なんか怪しい』
「あ、怪しいって、どういうことですか?私、何もやましいことなんて……」
『じゃあ、五十嵐くんとはどこで会ったの?』
「えっと、ちょっとそこらでバッタリと……」
『駅で待ち合わせてパソコンを渡したって、お相手の方は言ってましたけど?』
えっ……と怯んだが、なんとか取り繕う。
「そ、そうでした!ほら、課長と私の駅って3つしか離れてないじゃないですか。だから駅でささっと受け取って……」
『へえー、そんなご近所だとは初耳ですけど?』
うぐっと真美は言葉に詰まる。
もう何を言ってもボロが出る気しかしなかった。
『ま、いいわ。今日のところは逃がしてあげる。今度会った時には覚悟しなさいね?洗いざらい白状してもらうから』
「いえ、これと言って申し上げることは何も……」
小さく呟くが、紗絵はフンッと鼻で笑った。
『時々会議室で二人切りになってたり?望月、最近どう、なんて五十嵐くんが聞いてきたり?そのあと、俺が気にかけておくって妙に男前に宣言したり?挙句の果てには、待ち合わせした駅でバッタリ会ったなんて辻褄の合わないこと言ったり?もうこれは完全にクロ。真っ黒けよ』
「あの、紗絵さん。本当に私と課長は何もありません。それだけは信じてください」
『ふーん。ま、真美ならそんなに簡単に流されたりしないものね。きっとそれは本当なんでしょう。だけどそれにしても、何かしらのやり取りはあったんでしょう?なんだか面白そう。私もせっせと想像して楽しませてもらうわ。じゃあね!真美』
プツリと通話が切れ、真美はしばし呆然と画面を眺めていた。
公園で岳と駆け回ってから、真美は息を切らしてベンチに座り込む。
「まみ、もうつかれたのかよ?」
「うん。だって、普段走ることなんてないんだもん。信号が点滅した時くらいだよ」
「なんだそれ?まあ、いいや。じゃあジャングルジムしてくる!」
「はーい、がんばってね」
ふう、とベンチにもたれながら、岳がぐんぐんジャングルジムに登って行くのを見守っていると、ポケットの中でスマートフォンが鳴り出した。
取り出してみると、紗絵からの電話だった。
「もしもし、紗絵さん?」
『あ、真美!どう?無事に帰れた?ご家族も大丈夫だった?』
「はい、大丈夫でした。あの日は先に帰らせてくださって、ありがとうございました」
『ううん、無事なら良かった。それでね、他のメンバーはパソコンを持ち帰ったんだけど、真美だけ会社に置いたままだから気になってたんだ。ほら、しばらくは自宅でテレワークになったでしょ?』
あー……と、真美は顔をしかめる。
潤に持って帰って来てもらっていたが、それを紗絵に話す訳にはいかない。
「すみません、近々取りに行きますね」
と言う真美の言葉と
『でも良かったわ、五十嵐くんが……』
と言う紗絵の言葉が重なる。
二人して、ん?と沈黙した。
『真美、五十嵐くんと会ったんじゃないの?』
「え?会ってませんけど……」
そう言ってから、真美はハッとした。
おそらく自分のいない間に、潤と紗絵の間でなんらかのやり取りがあったのだろう。
そこで自分と潤が会ったことになっているのかもしれない。
「あー!そう言えば、会いました。えっと、ちょこっとだけ。あはは」
『あはは?……なんか怪しい』
「あ、怪しいって、どういうことですか?私、何もやましいことなんて……」
『じゃあ、五十嵐くんとはどこで会ったの?』
「えっと、ちょっとそこらでバッタリと……」
『駅で待ち合わせてパソコンを渡したって、お相手の方は言ってましたけど?』
えっ……と怯んだが、なんとか取り繕う。
「そ、そうでした!ほら、課長と私の駅って3つしか離れてないじゃないですか。だから駅でささっと受け取って……」
『へえー、そんなご近所だとは初耳ですけど?』
うぐっと真美は言葉に詰まる。
もう何を言ってもボロが出る気しかしなかった。
『ま、いいわ。今日のところは逃がしてあげる。今度会った時には覚悟しなさいね?洗いざらい白状してもらうから』
「いえ、これと言って申し上げることは何も……」
小さく呟くが、紗絵はフンッと鼻で笑った。
『時々会議室で二人切りになってたり?望月、最近どう、なんて五十嵐くんが聞いてきたり?そのあと、俺が気にかけておくって妙に男前に宣言したり?挙句の果てには、待ち合わせした駅でバッタリ会ったなんて辻褄の合わないこと言ったり?もうこれは完全にクロ。真っ黒けよ』
「あの、紗絵さん。本当に私と課長は何もありません。それだけは信じてください」
『ふーん。ま、真美ならそんなに簡単に流されたりしないものね。きっとそれは本当なんでしょう。だけどそれにしても、何かしらのやり取りはあったんでしょう?なんだか面白そう。私もせっせと想像して楽しませてもらうわ。じゃあね!真美』
プツリと通話が切れ、真美はしばし呆然と画面を眺めていた。