小さな恋のトライアングル
「ただいまー!」

元気な声が聞こえてきて、潤はパソコンから顔を上げた。

「おかえり」
「お、じゅん。いたんだ」

ガクッと潤はうなだれる。

保育園でどうしているだろうかと案じていたさっきまでの気持ちが、一気に吹き飛んだ。

「課長、すぐに晩ご飯の準備しますね。よかったら、がっくんと先にお風呂入っちゃってください」

真美に言われて潤は立ち上がる。

岳と一緒にシャワーを浴び、湯船に浸かると、それとなく聞いてみた。

「岳、今日は保育園で何したの?」
「ん?まみとけっこんのやくそく」

ザバッと湯が溢れてしまうほど、潤は驚いて仰け反った。

「な、な、な、なんだって?」
「だから、まみにプロポーズしたの。まみも、うんってへんじした。おれのことだいすきだってさ」
「ちょ、ま、え、そ、な」
「おい、じゅん。にほんごわすれたのかよ?」
「いや、だって。まさか、そんな」
「じゃあ、まみにきいてみれば?おれにプロポーズされたよな?って」

潤はもう何も言葉が出てこない。
4歳児だというのに、セリフの破壊力がハンパなかった。

「さーてと!もうでる。きょうのまみのごはん、なにかなー?」

ウキウキとバスルームを出る岳を、待てい!とばかりに潤も追いかけた。
< 71 / 168 >

この作品をシェア

pagetop