小さな恋のトライアングル

「それでね、しばらくテレワークで誰にも会ってなくて、寂しかったんですよ、私」

昼休みの社員食堂で、若菜が真美と紗絵を相手に話し出す。

真美は時折ポトリと箸を手から皿に落とし、その度に紗絵が握り直させていた。

「だから久しぶりに会った瞬間、盛り上がっちゃって……。まあ、元サヤってやつですね。会えない時間が二人の愛を温めたって感じでしょうか」

ふーん、と適当に相槌を打つ紗絵の横で、いきなりガバッと真美が身を乗り出した。

「若菜ちゃん、久しぶりに元カレに会えたのね？会えなかった時間を乗り越えられたのね？」
「え？まあ、そうですけど……。どうしたんですか？真美さん」
「ううん、なんでもないの。素敵なお話をありがとう！私もがんばる。またいつか会える日を夢見て」

はあ……と気の抜けた返事をしてから、若菜は紗絵に首をひねってみせる。

紗絵はまたしても両手を広げて、ヤレヤレと肩をすくめた。