小さな恋のトライアングル
「えっ、がっくんが?!」

3日後。
真美が帰宅すると、しばらくして潤から電話がかかってきた。

『ああ。25日の土曜日にクリスマスパーティーするから、よかったら来て欲しいって、姉貴と岳が』
「行きます!行かせてください!」
『分かった、伝えておく』
「はい!ありがとうございます」

電話を終えると、早くも真美はわくわくと待ち切れなくなった。

「そうだ!がっくんにクリスマスプレゼントを用意しよう。何がいいかなー?」

考えながらベッドに入り、翌日はスッキリした顔で出社する。

「おはようございます!紗絵さん、今日は私、定時で上がらせていただきます!仕事、ちゃっちゃとやりますね!」
「お、おはよう。真美、生まれ変わったね。今日は何か楽しい予定でも入ったの?」
「そうなんです!クリスマスプレゼントを買いに行きたくて。何がいいかなー?うふふ」

紗絵はもはや不気味ささえ感じて、真美の様子に眉をひそめるばかりだった。

気持ちを入れ替え、コーヒーでも買いに行こうと廊下に出たところで、紗絵は平木にばったり会う。

「おっ紗絵!久しぶりだな」
「ええ、そうね。今年もお世話になりました。良いお年を」
「おいっ!まだクリスマス前だぞ?」
「平木には、もう年内会わないつもりなので」
「ちょっと!せめて忘年会しようぜ」
「やるなら新年会とまとめて。あけおめー、ことよろー」
「気が早すぎ!」

はあ、と肩を落とすと、平木は声を潜めた。

「で?あれからどうなの?潤と望月ちゃん」

紗絵はピタリと立ち止まる。

「ん?なんかあったのか?」
「もう、訳が分かんない」
「どういうこと?」
「分かんないから言ってんの!あの二人絶対何かあるはずなのに、変なんだもん。五十嵐くんはまた残業する毎日だし、真美はもぬけの殻みたいになって出社するから、つき合ってたけど別れたのかな?って思ってたら、いきなり真美はシャキーン!って立ち直って、クリスマスプレゼント、何がいいかなー?なんて、目をハートにするし」

ちょちょ、ちょっと!とたまらず平木は手で遮る。

「情報量多すぎ!何がどうなってんの?」
「分かんないんだってばー!」

地団駄を踏む紗絵に、ヤバいな、これは、と平木は後ずさる。

「じゃ、今日のところはこれで。またなー、紗絵」

これ以上刺激してはいかんと、平木はそそくさと立ち去った。
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