小さな恋のトライアングル
「まみ!」
「がっくん!」

玄関を開けるなり飛びついてきた岳を、真美はしっかと抱きしめる。

「あらあら、感動の再会ね。何年も離れ離れになってた恋人同士みたい。ねえ、潤?」

都が意味ありげな視線を潤に送る。

「別に」
「あら?ひょっとして、いや、ひょっとしなくても妬いてるわね」
「そんなんじゃないよ」

ぶっきらぼうに答えて靴を脱ぐと、潤はさっさと部屋に向かった。

「まみ、はやくいこ!こっちこっち」

岳が手を引き、真美は都に「お邪魔します」と声をかける。

「どうぞ。狭くて散らかってるけど、気楽にしててね」
「はい、ありがとうございます」

通されたリビングは潤のマンションほど広さはないが、日当たりも良く、都のセンスがうかがえるオシャレな空間だった。

「まみ、ここにすわってろよ。いま、ジュースもってくるからな」
「うん!ありがとう、がっくん」

岳ー、俺のはー?と言う潤の言葉は届いていないらしい。

岳はいそいそと冷蔵庫からジュースを取り出してグラスに注ぎ、両手でそうっと運んだ。

「はい、まみ。ジュース」
「ありがとう!がっくんのは?一緒に乾杯しようよ」
「うん、そうだな」
「じゃあ、がっくんのジュースは私が入れるね」

真美は岳が持って来たグラスにジュースを注ぐ。

「じゃあ、乾杯しようか。がっくんにまたあえて嬉しい!かんぱーい!」
「おれも、まみにあえてうれしい。かんぱーい」

笑顔で見つめ合い、美味しそうにジュースを飲む二人に都は思わず吹き出してから、潤にコーヒーを淹れた。

「はい、潤くん。久しぶりの再会にかんぱーい!」
「やめろよ」

ムッとしながら、潤はコーヒーを口にする。

「うわっ、マジだね、潤」
「なにがだよ?」
「冷静になりなよ。いや、見習いなよ、の方が正しいか。相手は4歳だよ?29の男が情けない」
「何が言いたい?」
「だから、岳みたいに素直になればいいだけでしょ?大好き!ムギューッて」

岳の方がうわ手だねー、と言いながら、都はキッチンに戻った。
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