小さな恋のトライアングル
「もう!課長ったら」

給湯室でコーヒーを淹れながら、真美は思わず声に出す。

「あんなに露骨にからかうなんて。ひどい!」

毎日あんなことをされては、身がもたない。

(今夜うちでしっかり釘を刺しておこう)

うん、と大きく頷くと、コーヒーメーカーからポットを外してトレーに載せ、オフィスに戻った。

「コーヒー飲む方いらっしゃいますか?」

声をかけると、「はーい!お願いしまーす」と数人が手を挙げた。

真美はデスクを回って、それぞれのカップにコーヒーを注いで回る。

「望月、俺も頼む」

潤の声がして一瞬ギクリとしながらも、平静を装って、はいと返事をした。

だが潤のデスクに置かれたマグカップを見て、真美はヒクッと顔を引きつらせる。

「ん?どうかしたか?」
「いえ、何も」

そう答えつつ、じろりと潤を睨んでからコーヒーを入れる。

そのマグカップは、昨日お揃いで贈り合ったあのカップだった。
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