小さな恋のトライアングル
その日の夜。
ピンポーンとインターフォンが鳴り、真美は仏頂面のまま玄関を開ける。

「ん?どうした、真美。可愛い顔が台なしだぞ?」
「課長のせいじゃないですか!もう、どうしてあんなことばっかり!」
「あんなことって?」
「だから、あんなことですよ!」

思わず声を荒らげた時、隣の部屋の玄関がガチャッと開く音がして、真美は慌てて潤の腕を引く。

パタンとドアが閉まった時には、真美は潤の大きな腕の中にいた。

え?と顔を上げた瞬間、潤に深く口づけられる。

ん……と吐息がもれ、胸がジンとしびれた。

「課長……、待って、んっ」

逃れようとする分、逃すまいと閉じ込められる。

徐々に真美の身体から力が抜け、思わず壁に寄りかかると、潤は真美の顔の横に手をついた。

「真美……」

唇を少し離して、切なげに名を呼ばれる。

「夢じゃないって、確かめたかったんだ。俺のことを好きだと言ってくれたのは、幻なんかじゃないって。夕べ真美をこの手で抱きしめた時の温もりが、消えてしまいそうで……」

課長……、と真美が呟く。

「仕事中の真美はいつも通りで、だから余計に不安になった。俺、ずっと前から真美のことが好きだったんだ。ようやく想いが結ばれて、信じられないくらい幸せで……。夢じゃないよな?いなくならないよな?真美」

切羽詰まった余裕のない潤の表情に、真美は胸が詰まった。

こんなにも、この人は私を求めてくれている。

私はこんなにも心から愛されているのだと、込み上げる幸せに胸が打ち震えた。

真美は両腕を潤の首に回してギュッと抱きつく。

「大好き。私、あなたのことが大好きです……潤さん」
「真美……」

潤はクッと何かを堪えるように顔を歪めてから、真美を強く抱きしめて熱く唇を奪った。

「真美、愛してる。ずっと離さない」
「潤さん……」

二人は長い間互いの愛を伝え合い、抱きしめ合っていた。
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