北帝連―Taiju×shinobu編
なんだか自分のせいで山岡先輩に損をさせてしまったみたいで、少し気まずさが残ったままその場を離れた俺達は、先輩達の視界から逃れた辺りで重い沈黙を破った。
「‥‥番長かな、あの牧村って人」
「どう見てもそうだろ。
なんか一人だけ雰囲気が別格だったし」
「とりあえず、金返ってきて助かった‥」
「お前、次からちゃんと断れよ。
危うく菅野先輩にも買わされそうになってんじゃん」
「うん‥」
金の問題なんかじゃなく、牧村という男が言った言葉が頭から離れなかった。
所見の人間から見ても、俺が弱い男で忍が強い男だと見抜かれたのは、これ以上ない屈辱だった。
「で、どこで上映会やる?」
「結局お前も観たいんかい」
自分とコイツを比べた所で、何も勝てないのは分かりきっているし、ただ自分が惨めになって嫌な気分になるだけ。
プライドばかりが先行し、変えようとする努力も怠る様な奴は、本来なら悔しがる事さえおこがましい。
「あ、これ全部巻き戻ししてねえじゃん。
山岡先輩の性癖お披露目会だな」
「忍の洞察力コエーよ‥。
よくそんな事に気づくな‥」
知り合って間もないけど、一緒に行動する時間が長くなればなる程、自分の事を嫌いになりそうだった。
「‥‥‥」