『変化を生み出し奇跡を起こす』【新編集版】
「2人の奇才経営者によって設立されたソニーは、誰も思いつかないような画期的な製品を次々に開発して世界を席巻していきました。
 代表作として『ウォークマン』があります。
 それまで音楽は家で聴くものというのが常識でしたが、その常識をひっくり返したのです。
 音楽は外でも聴けると。天地をひっくり返すような素晴らしい発想でした。
 それは、若者を中心に熱烈な支持を受け、全世界で受け入れられるのに時間はかかりませんでした。
 正に一世を風靡したのです。
 しかし、2人の創業者が次々にこの世を去ると、次第にその輝きは失われていきました。
 特に、ガバナンスやマーケティングを重視する人物が経営者として采配を振るうようになると、画期的な新製品は出なくなり、どこにでもあるような普通の会社になっていきました。
『常識を打ち破れ!』という創業者の想いは忘れ去られ、常識的な良い会社を目指すようになったのです。
 それでもソニーらしさを失わなかったひとたちもいました。
 例えば『プレイステーション』の開発に携わった人たちです。
 そのリーダーはとても独創的な人で、かつ独特な性格の持ち主でもあったようです。
 だから上層部の中に理解者が少なかったとも言われており、プレイステーションが1兆円の事業になったこともあって副社長までは上り詰めましたが、社長になることはありませんでした。
 そして、その後ソニーを去ることになりました。
 彼が社長になっていたらソニーはどうなっていただろうか、と時々思うことがあります。
 あくまでも勝手な想像ですが、今の何十倍、何百倍も面白い会社になっていたのではないでしょうか。
『常識を打ち破れ!』という創業者の想いに応えて、奇抜なチャレンジを続けていたのではないかと思います。
 もしかしたらアップルに先駆けてスマホを開発していたかもしれません。
 そんな気がします。
 逆に言うと、今のアップルがあるのはソニーのお陰のような気がします。
 彼を社長に抜擢しなかった当時の経営陣の失敗が、現在のアップルを生みだしたと言えるのかもしれません」

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