『准教授・駿河台ひばり』 ~変人・奇人の時代~  【新編集版】
 そうか、この鳥のことだったんだ……、
 先見さんから貰ったメールを思い出した。
 そこには、『池ではカイツブリが子育て中で、縞模様のヒナが親鳥を追いかけて餌をねだる姿がたまらなくかわいいです。しかし、ちょっと前まではその姿を見かけることもありませんでした。カイツブリの主な餌は在来魚のモツゴなのですが、外来種のブルーギルに占領されて数を減らしてしまったからです。それで関係者が危機感を持ったせいか、二度のカイボリ(池干し)を行って外来魚を駆除することができたため、モツゴの数が増えて子育て環境が整い、あちこちでヒナが生まれているのです。まだ抱卵(ほうらん)中の親鳥もいるので、卵から(かえ)る日を楽しみに待っているところです』と書いてあった。
 
 もしかして生まれたのかな、と思いながら見つめていると、羽の中から小さな鳥が顔を出した。
 するとその瞬間、周りから「わ~」とか「かわいい」という声が上がった。
 ほんとにちっちゃくてかわいかったので目が離せないでいると、近くの水面に姿を現したもう一羽のカイツブリが近寄ってきた。
 父親だろうか? 
 小さな魚のようなものをくわえていた。
 それを見つけたのか、羽の中に隠れていたヒナが外に飛び出して、ちっちゃな体で泳ぎ始めた。
 そして接近するや否やその魚を(くちばし)で奪い取り、飲み込むとすぐにまた元の場所まで泳いで羽の中に潜り込んだ。
 
 見てて、なんか感動した。
 生きてるんだな~って、
 必死になって生きてるんだな~って、
 あんなにちっちゃいのに頑張ってるんだな~って、
 じわ~っと体の中から熱いものが込み上げてきた。
 すると、わたしも頑張らなきゃ、ってそんな気持ちになった。
 よし!
 ヒナに貰った元気をパワーに変えて教授の家に向かった。

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