御曹司たちの溺愛レベル上昇中
「あ、皆お帰り」
微笑む雪さんに、響くんチェックが入る。
「……うん、泥だらけになってないね。ちゃんと手も洗ってあるし。合格」
「やった」
嬉しそうに小鳥遊くんの隣へ、すごい端っこだけど雪さんも座って四人が揃った。
話題は引き続き夏休みの……と思った途端に、響くんはあのことを切り出す。
「夏休み話もいいけど、颯くん。ここ最近様子がおかしいのは何で?」
「……は!?」
……知ってはいたけど、響くんがわりとまっすぐな言い方をするのは。
でも、この場で小鳥遊くんに聞くとは思ってなかった。
多分雪さんもわたしと同じ心境だと思う。
答えなよ、と言わんばかりの響くんに、
目を泳がせ、口ごもる小鳥遊くんを
はらはらして、二人を交互に見つめているから。
「ぶっちゃけそわそわしてる感じが気になってたんだけど?誰かに何か言いたいんですか?」
「それは、そのだな……」
言わないと解放されない空気感。
その中で、小鳥遊くんはわたしを指差した。
「……小柳さんに言いたいことがあるの?」
響くんとは違って、優しく問う雪さんに小鳥遊くんは頷いた。
なんとなく、教室でのことでそう思ってたけど。
わたしたち三人の視線が小鳥遊くんに集まる中、小声で小鳥遊くんは呟くようにして言った。
「……名前」
──名前?