御曹司たちの溺愛レベル上昇中
「どういうこと?」
間髪容れずに響くんは小鳥遊くんに尋ねるけど、またも言いづらそうな小鳥遊くんに、雪さんが何かを悟った。
「……もしかして、颯は響みたいに小柳さんを名前で呼びたい、とか?」
「違っ……!逆だよ、逆……」
「逆……ってことは、わたしに颯くん呼びしてくれってこと?」
コクン。
小鳥遊くんは膝を抱え、目は会わせてくれないけど、赤らめた顔で頷いてくれる。
にしても、今まで名前で呼んでとか言われなかったから意外。
……でも、わたしも小鳥遊に反応する三人を見ると、ちゃんと呼んだ方がいいと思う。
呼ばれたのは自分だってわかるし。
「うん、わかった。慣れるまではちょいちょい小鳥遊くん呼びしちゃうかもだけど……颯くん呼びにするね」
快く承諾し……颯くんに笑いかければ、膝に顔を埋めてしまった。
でもこれで颯くんの最近のおかしさはなくなる。
解決したってわけだ。
「名前で呼んで欲しくてそわそわって、小学生みたいですね」
「……うるさいな、お前にはわからんよどーせ。小柳と付き合いが長いんだから、急に変えろっていうのはっ……」
「照れ臭いのね。わかりましたよもう」
「良かったね、颯。……だったら俺は琉衣ちゃんって呼ぼうかな」
「え!?」
ずっと膝に埋めたまま会話をしていた颯くんが、顔を上げ、雪さんを凝視した。
響くんもまた驚いた様子だけど咳払いをして、顔を背ける。
「ま、まぁいいんじゃないですか?琉衣さんが良ければ」
「……いいかな?」
なんかこの感じ……
いつぞやに見た颯くんの犬のようなおめめにそっくりで──
「はいっ」
雪さんにも可愛いという感情が芽生えてしまった。