御曹司たちの溺愛レベル上昇中
「小柳の趣味はなんだよ。節約とか詰め放題意外で頼むぞ」
節約って……貧乏でもそれは趣味にはしないって。
詰め放題は特技だからちょっと違う。
でも改めて趣味って何?って聞かれると、なんだろうって思っちゃうな……
「掃除?あ、裁縫とか!……え、何?」
これだ、って思える趣味なんだけども。
颯くんの表情は微妙で……口にした感想が、
「ばばくさ」
「っなんてこと……!」
「あははっ」
思わず立ち上がるわたしから逃げる颯くんを追いかけようと思いきや、
「あーあ……」
遊んでいた子供たちの声でわたしたちは止まった。
どうしたんだろ、わたしが振り向いて周りを見渡すときには既に颯くんが子供たちのもとへ歩み寄っていた。
「どうした?」
「ボール、木の上にのっちゃった……」
男の子が指差した方を見上げると、ドッジボールをしていたボールが枝と枝に挟まれていた。
子供の体では登るのは危ない高さで。
「なるほどな。ちょっと待ってろ」
颯くんは男の子に笑いかけ、木の方へ……
まさか登るの!?
「ちょっ颯くんっ!」
「平気だって。木登りしてたって話したろ?めちゃめちゃ久しぶりだけどっ」
するすると登っていく姿に、子供たちは
"すごい!"とか"かっけぇ!"とか嬉しそうなのに、わたしひとりが慌ててる。
落ちたらって思うでしょ?
さっきの電気でも下敷きの準備してたんだから。
「あ……」
わたしも下に行こう。登れはしないけど、また万が一に備えて。