御曹司たちの溺愛レベル上昇中
すたすたと廊下を歩いていくわたしの後ろから、小言を言い合いながら颯くんも響くんも追いかけてくる……
「お前、本屋行ってたから仕方ないだろ」
「行くの知ってたら別の日にしましたもん」
「嘘だぁ、いつも新刊出るんだ!ってわくわくしてるくせに。というかいつ帰って来たんだよ。またどっかの店に入って夢中で読んでたんだろ?」
「読み終わる頃に村田さんのメッセージ見て、暗くなったの気付いたから……二人が帰ってくるちょっと前。だから玄関で待ってたの!」
共有ルームの前に着いたがやっぱり颯くんの言ってた通り暗いや。
雪さんが寝てるのかもしれないからと、わたしはゆっくりドアを開けて入った──その瞬間、
薄暗い中視界に、何か黒い影がすごい速さで横切っていった。
グチョッ……!
「い"!?」
「え、何……」
余りよろしくなさそうな音がして、壁に当たって落ちた物は何かと、瞬時にわたしの肩に手を置いた二人とともに、視線は床へ……
これって──
『魚の頭……!?』
わたしたちの声が響くと、キッチンから金属音がした。
思わず身構え壁に寄った時、何か黒光りするものが天井へと上がっていき、それは包丁なのだと認識した──
ウソでしょ?
……空き巣?
「っ下がって琉衣さん……!」
「下がれ小柳っ!」
わたしのことを押し退けて、壁になる二人。
「待って危なっ──!」