御曹司たちの溺愛レベル上昇中
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あぁ……掃除の筋肉痛がっ……
それに昨日──
あのあとすぐ、小鳥遊くんたちのジャンケンを止めに入って、次に行った時にやろうという話になったわけだけど、一緒に行ったらまたあの展開になるやもしれない……
うん。小鳥遊くんに脚立あるか聞いてみよ。
筋肉痛で鈍い体を起こして着替えると、わたしはすぐに下へ向かおうとドアを開けた。
「ほんとバキバキ……」
「おはよう……小柳さん」
「あ、おはようございます。雪さん……?」
部屋を出てすぐのところにいた雪さんの手には、一輪の花が。
わたしが花に目をやっていると、雪さんが俯きがちに口を開いた。
「その……この前のこと謝りたくて」
「この前?」
「俺が、あまり関わらないでって言ったこと……」
学校から帰ってきて偶々遭遇できた雪さんに言われた言葉だ。
だから、雪さんがわたしのアパートの片付け来ててくれたことには、驚いたし。
「俺……人見知りで、言葉足らずなところがあるから……でも、あの言い方は良くなかったよね」
俯いている顔がもっと俯いてしまった雪さんにわたしは笑いかける。
「大丈夫ですよ。だけど、少しでも仲良くしたいなぁとは思ってます」
「うん、俺も。……だから、ごめんなさいと宜しくの意味を込めて、これ……俺が育てた花」
雪さんは、手に持っていた花をそっと、わたしに差し出した。
「……もらっていいんですか?」
「うん。裏庭で育てたの。綺麗に咲いたから」
ラッピングも綺麗にされていて、おまけにリボンまで。花も凄く綺麗でいい香りがする。
ん、裏庭?
わたしはいつも表からしか入らないし、この家の裏側は見たことがない。
花を育ててるのは裏庭……
勝手口から出入りしてるって響くんが言ってたから、これはもしや──
「あの時、手が土だらけだったのは……」
「学校の帰り、土いじりしてた……植える種探しに部屋に来てたところだったんだ。あっ、手を洗わずに家に入ったことは、響には言わないで欲しい……」
すぐ怒るから……と。
嫌そうな顔をする雪さんに、わたしは大きく頷く。
怒られるのはいやだもんね。
「はいっ分かりました。綺麗なお花、ありがとうございます。嬉しいですっ」
「良かった……こちらこそありがとう」
薄く笑う雪さんを見て、やっぱり優しい人なんだと、実感した。