背中
第四章 見つめていた

色づく季節

「サトミ。最近、なにかいいことあったの?」

昼休み、自分の席で弁当を食べるサトミの顔を見て、前の席に座るキリコは嬉しそうな顔でそう言った。


サトミのような引っ込み思案な人間には、人は様々な態度で接してくる。


キリコのように、心配そうに見守ってくれる人。

関わりあいをもとうとしない人。

そして、明確な悪意で接してくる人。


そのだれもが、根本には自分のことを下に見ていることをキリコは理解している。

サトミはそのことに、もう慣れきっている。


いや、慣れきっていた。
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