背中
(何で・・・。)

サトミは心の中でそう呟いた。


やっと全ての中身をかばんに詰め込むと、ホームの隅に置かれたベンチに座り込む。

そしてかばんを足元に置くと、小さく息を吐いた。


急ぐ必要もない。

田舎から出てきたサトミは、アパートに帰っても一人ぼっち。


こんな状況になっても、誰も彼女と接しようとはしない。

どんなに遅くなっても、誰も心配してくれなどしない。


(気持ちが落ち着くまで、心置きなくこのベンチで休もうかな・・・。)

サトミはそうつぶやくと、疲れたように宙を見上げた。


その背中を、虚ろな夏の熱気が覆いつくしてくる。
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