背中
夜の病院は静まり返っていた。


数ヶ月前、風邪を引いたサトミが、駆け回る子供たちの中を歩いて受付に向かった時とは全く違う、胃の奥が焼かれるような雰囲気であった。

「あのう・・・。」

サトミが切れる息を整えながらそう言うと、緊急窓口の女性看護婦が顔を上げた。


「この人・・・こちらに搬入されませんでした・・・?」

サトミがそう言って差し出した写真を、その40代くらいの看護婦はメガネを右手で直しながら覗き込んだ。


そして焦点が合うと、慌てたように顔を上げた。


「あなた、お知り合いですか?」

「は、はい。」

サトミがそう答えると、看護婦は目の前の内線電話を手に取り、何かしらを話して受話器を乱暴に置いた。


「そちらで座って、お待ちください。」

看護婦に指差された革張りの椅子に、サトミは落ち着かない様子で座った。



壁にかけられた時計を見ると、もう夜の11時を回っている。
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