背中
第十章 いてしまった
病院にて
そこは応急処置室のようであった。
堅いベッドの上に横たわる「それ」は、真っ白な包帯で体中を巻かれていた。
唯一まかれていない閉じられた両目は、残念ながら優しいしわが刻まれていた。
「駅員から、カバンの手帳から両親に連絡が取れたと電話がありましたので、ご安心ください。」
医師はベッドの傍らに悲しそうな表情で立ってそう言うと、その目を覗き込んだ。
「どうして命を粗末にするのでしょうね。僕みたいな命を救う立場の人間からすると、ものすごく寂しい気持ちになります。」
みなぎっている雰囲気は30代くらいであろうか、力なく立つその姿が胸を打つ。
医師は、サトミのほうに向き直った。
「駅員から聞きました。あなたのような方がいるのに、どうしてこのようなことをするのか・・・。」
サトミは、呆然と立ち尽くすしかなかった。
変わり果てたその姿に、身動き一つ出来なかった。
堅いベッドの上に横たわる「それ」は、真っ白な包帯で体中を巻かれていた。
唯一まかれていない閉じられた両目は、残念ながら優しいしわが刻まれていた。
「駅員から、カバンの手帳から両親に連絡が取れたと電話がありましたので、ご安心ください。」
医師はベッドの傍らに悲しそうな表情で立ってそう言うと、その目を覗き込んだ。
「どうして命を粗末にするのでしょうね。僕みたいな命を救う立場の人間からすると、ものすごく寂しい気持ちになります。」
みなぎっている雰囲気は30代くらいであろうか、力なく立つその姿が胸を打つ。
医師は、サトミのほうに向き直った。
「駅員から聞きました。あなたのような方がいるのに、どうしてこのようなことをするのか・・・。」
サトミは、呆然と立ち尽くすしかなかった。
変わり果てたその姿に、身動き一つ出来なかった。