背中
目の前を、何人もの会社員が歩いていく。

その中に誰一人、サトミが先ほどまでうろたえてカバンに物を詰め込んでいたことを覚えている人はいない。


サトミはそのゆらゆらと揺れる人影をぼんやりと見ているうちに、結構女性で働いている人が多いことに気がついた。


あと2年ほどしたら自分も働いているのだろうか。

想像も出来ない。


そんなことを考えているうちに、ふと気がついた。

このカバンを無くして困っている人がいるはず。


サトミはキョロキョロと辺りを見回した。


でも、ただただ家路を急ぐ人の群れがぬるりと流れているだけで、そんな様子の人はいなかった。
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