背中
「え?」

尾上の構えるカメラの前に立つ土門は、突然のことに驚いた。


三年間、ケンジに白球を投げ返し続けた右手に、下級生の女の子がしがみついている。


え?


「ちょ・・・。」

土門は、思わず戸惑ったような声を上げる。


「いいじゃねえか、いやじゃないだろう?」

尾上が、カメラから目をはずして面白そうにそう言った。


「まあ、そりゃそうだけど・・・。」

土門は戸惑いながら観念したようにそう言うと、尾上の構えるカメラのレンズを見つめた。
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