背中
土門はあちこち繕われた座布団に腰を下ろすと、テーブルの上に置かれたリモコンに手を伸ばした。

すると、目の前のテレビがぼう、と虚ろな音を立ててついた。


ブラウン管の中では、若い芸人が乾いた笑いを繰り広げていた。

しかし土門は、全く興味がない。


苛立ったようにチャンネルを変えると、ナイター中継が映し出された。

甲子園でライバル物語を繰り広げた投手が、一年目から剛速球をびゅんびゅん投げている。


そういえば、今年大学三年生になった兄の球は速かった。

たまの帰省の時に受けると、ケンジの速球に慣れている土門の手のひらが見る見る腫れ上がった。


兄弟という贔屓目なしに、東都大学リーグに所属する野球部のエースである兄の球は、プロでも通用すると思った。
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