背中
第十四章 頑張る

頑張る季節

土門がコーヒーショップの扉を開けると、そこには懐かしい顔が並んでいた。


地元の大学の医学部に進学した尾上。

美容師として腕を振るう香澄。

市役所で頑張る奈央。


東京の大学に行ってしまったケンジと、家計が厳しく働き続ける裕美の姿がないのが残念であったが、高校時代いつも一緒の仲間たちだ。


土門が席に着くと、モデルのように整った顔をした香澄が、土門を見てぷうっと笑った。


「七三じゃん!」

去年の夏に部活を引退してからのばした髪が、きれいに分けられているのを見て堪えられなくなったらしい。


「いいじゃない。真面目そうでいいと思うよ。」

香澄のほうをちらりと見ながら、小柄でかわいらしい印象を与える奈央はそう言った。


四人は、現在の生活をそれぞれに話した。

全員種類こそ違え、新しい生活に悩みを抱えていた。


その悩みは全て共感が出来、土門は心の底でほっと胸をなでおろした。
< 61 / 98 >

この作品をシェア

pagetop