背中
「私、いつも裕美と二人で、ケンジ君の投球練習を見てた。」

奈央がゆっくりと話す顔を、三人はじっと見つめる。


「その時、隣りでいつもじっと私たちと同じ方向を向いていたのが彼女。」

そう言うと、奈央は不思議そうな顔をして首をかしげる。


「でも私たち、いつもケンジ君が正面に見える位置で見てたから、てっきり彼を見てたのかと・・・。だって、土門君は背中しか見えないんだもん。」

土門はそう言う奈央の顔から目をそらすと、再び写真に目を落とした。


(野球の練習を見ていたのか・・・。)

そう思うと、土門は左の手のひらをじっと見つめた。
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