背中
サトミは、室内練習場のさらにおくにある野球場で、華やかな舞台を夢見てもがく選手たちを見ることが日課になっていた。


白球を追い、ユニフォームを泥だらけにする選手たち。

その姿は、無味乾燥な大学生活に実感を与えてくれる。


あの背中。

いつもこうやって見てたな。


その声。

いつも後から聞いてたな。


頑張ることがある。

なんて、すばらしんだろう。


今の自分にそんなものはない。


ただバイトして。

ただ友達と遊んで。

ただ寝るだけ。



なにもない。
< 69 / 98 >

この作品をシェア

pagetop