背中
その時、サトミは、異常を察した乗客の一人に背中を強い力で掴まれた。

そして荒っぽくホームに投げつけられると、激しくアスファルトを転がった。


「どうしてよう!どうしてよう!」

サトミは泣きじゃくった。


通勤時間帯ではないため、あたりには数人しかいなかったが、みんな遠くへと去っていった。


しかし一人だけ、助けてくれた人だけが残っていた。


その人は、ゆっくりとしゃがむと、静かに言った。

「死んだって、何にも解決しないんだ。」


サトミは、涙で汚れた目を上げた。

そこには、土門が立っていた。
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