手のひらの魔法
響希がわたしの家を訪ねて来たあの日から、3ヵ月が経った。
あれから、茜さんからの嫌がらせもなければ、響希からの連絡も来なくなっていた。
響希、元気にしてるかな。
茜さんと上手くいってるだろうか。
そのことがずっと頭から離れずにいた。
「森崎さん、これ打ち込みお願い。」
「はい、わかりました。」
わたしはというと、何も変わらない毎日を送っている。
故障した電話は新しく買い替えてもらい、パソコンやマウスも壊さないように、ハンカチをすぐ横に置いて気をつけながら仕事をしていた。
「はぁ、、、疲れたぁ。」
頼まれた資料の量があまりにも多く、18時定時が気付けばいつの間にか20時を過ぎていた。
会社に残っていたのは、わたし一人だけ。
わたしは帰る支度をすると、会社のドアに鍵をかけ、家路についた。
すると、わたしが住む2階建てアパートの階段に誰かが座っているのが見えた。
暗くてよく見えなかったが、近付いてわたしは気付いた。
「響希、、、!」
何と階段に座っていたのは、響希だったのだ。
わたしの帰宅に気付いた響希は「よっ!お疲れ!」と言い、立ち上がった。