手のひらの魔法
それが原因で今までお付き合いしてきた男性にもフラレてきた。
付き合う前にわたしは必ず多汗症であることを打ち明けてきたのだが、みんな口を揃えて「そんなの気にしないよ!」と言ってくれるが、あまりの手汗に次第に手を繋がなくなり、最終的には別れを告げられてしまうのだった。
男性不信になったわたしは、ここ3年程恋人がいない。
というより、恋愛を諦めたのだ。
男性に手を触れられるのが怖い。
男性だけじゃなく、誰にでも指先さえ触れられることに抵抗があった。
事務員の電話を故障させてしまったことに凹むわたしは、仕事帰りの街並みをトボトボと俯きながら歩いていた。
すると、「あれ?花澄?」と、わたしの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
ふと顔を上げると、そこに立っていたのは、幼馴染の坂元響希だった。
響希に会うのは、いつぶりか分からない程久しぶりだ。
そして、響希の横には女性が立っていた。
きっと彼女だろう。
響希と手を繋ぐ彼女。
その姿に嫉妬している自分がいた。
いいなぁ、、、わたしも好きな人と手を繋ぎたかったなぁ。
「響希、、、。」
「花澄、久しぶり!どうしたんだよ、何か元気ない?」
わたしを心配してくれる響希の横では、ピッタリと響希にくっつき、わたしのことを面白くなさそうな表情で見つめる彼女の姿があった。
わたしは気まずくなり、「大丈夫だよ!響希、デート中なんでしょ?お邪魔しちゃ悪いから、じゃあね!」と言うと、響希たちとすれ違うように走って家路についたのだった。