手のひらの魔法
わたしたちは、その後すぐに警察署へ行き、被害届と監視カメラの映像を提出すると、わたしの自宅に茜さんを近付けさせないようにしてもらった。
警察の人はさっさと終わらせたがるように「はい、じゃあ、これで受理したから帰っていいよ。」と面倒くさそうに言った。
わたしにとっては心が傷付く出来事だったが、警察の人からすれば何十件も何百件も同じようなことがある、当たり前のことなんだろうなぁ。
そして被害届を出したあとからは、あの嫌がらせはなくなった。
しかし、嫌がらせはなくなっても、あの時の精神的ダメージは消えることない。
それから、わたしたちは毎週の土日どちらかには、必ず会うようになった。
嫌がらせはなくなっても、元気のないわたしに気付き、響希がわたしを元気付けようとしてくれているのは感じていた。
ドライブに連れて行ってくれたり、ランチに行ったり、時にはわたしの家で一緒にご飯を作って食べることもあった。
響希と一緒に居るときは、笑顔で居られている自分に気付く。
やっぱり響希と一緒に居る時が、一番安心していられるのだった。
そして、わたしの次の病院受診日。
茜さんが働いていることは分かっているが、ずっと通い続けている病院だ。
なかなか良い転院先が見つからず、頻繁に通院しているわけでもないので、転院先が見つかるまでは我慢して通おうと思っていた。
今日も響希が病院まで送ってくれ、わたしはいつものように正面玄関から入り、受付番号を取ると、総合受付まで行き、診察券と保険証を出す。
すると、わたしの診察券を見た受付の人の表情が変わり、「少々お待ちください。」と言われたのだ。
えっ?何?
いつもと違う対応に戸惑っていると、受付の人は「麻酔科の待合室でお待ちいただけますか?」と言ってきた。
いつもなら、総合受付前の待合室で待ってから呼ばれるはずなのに、、、
わたしは「わかりました。」と言うと、そのまま麻酔科の待合室の方へ歩いて行った。