手のひらの魔法
あれから、茜さんからLINEは来なくなった。
しかし、定期的に響希からわたしを心配するLINEや着信などがあったが、わたしは全て既読スルーし、着信にも出なかった。
響希には申し訳ないと思ったが、また茜さんに誤解を招くことをしてはならない。
もし仮に響希からの着信に出て、事情を説明したとしても、茜さんが悪者になってしまうかもしれない。
そう思うと、やはり無視をするしかなかったのだ。
そして、響希からのLINEと着信をスルーするようになってから、1ヵ月経ったくらいの時だった。
休みの日の昼間にインターホンが鳴ったのだ。
誰だろう?
宅配?特に何も注文してないはずだけどなぁ。
そう思いながら、インターホンの受話器を取った。
「はい。」
「あ、花澄?俺だよ、響希!大丈夫?!」
受話器の向こうから聞こえてきたのは、慌てた様子の響希の声だった。
わたしはドキッとした。
脳裏に浮かんだのは「響希に近づかないで」という茜さんの言葉だったからだ。
しかし、わたしは玄関のドアを開けた。
ドアの向こうには、急いできたのか疲れた様子の響希の姿があった。