契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
「君にはここで進太郎の世話をしながら暮らしてもらう。もちろん、子どもを産んでからの話だが」
「進太郎君の世話?」
「沙織とは縁を切るが、進太郎は残念だが太田家の息子として大きく公表してしまった。今さら放り出せない」
母親とは会えないようにして、この離れで育てるというのだろうか。
心配していた通り、このままでは進太朗はかつての香耶のように籠の鳥になってしまう。
「沙織は都合のいい女だったが失望したよ。子どもを作れば私をだませると思ってホストと寝たらしい」
そう言いながら、洸太郎がネクタイを緩めながら近づいてくる。
「来ないで! こっちに来ないで」
「もう一度やり直そう、香耶」
手にしていたネクタイで、香耶の両手を縛ろうとする。
香耶は洸太郎から逃れようと、精一杯暴れて抵抗した。
だが、狭い部屋の中では限界があった。
「面倒だな」
「あっ」
洸太郎に頬を殴られ、倒れたところで腹部を蹴られてしまった。
鈍い痛みを感じて、すぐには立ち上がれない。
香耶が動けないのをいいことに、洸太郎は容赦なかった。両手は体の前に合わせる形で縛られた。
「こんなことして、許されないわ」
「仕方ないだろう、君がおとなしくしないからだ」
殴られた頬はジンジンと熱を持つ。
おそらく赤くなっているだろう。
「別れたころより、女らしくなったじゃないか。男ができたのか」
触られたくないし、返事もしたくない。
こんな男に抱かれたくなくて、悔し涙がにじみそうになってきた。
洸太郎が覆いかぶさってくるかと思った時、ゆっくりとドアが開いた。