契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
検査の結果、恵子はやはり気胸で、間質性肺炎も再燃していた。
中等度のため手術の必要はなく、胸腔ドレナージで症状は落ち着いた。
「恵子さん」
入院病棟に移った恵子に香耶が呼びかけたら、うっすらと目を開けた。
「ありがとうございました。また助けてくださって」
二度も助けられた感謝の気持ちを込めて、香耶は恵子の手をそっと握った。
恵子の目にも涙が浮かんでいる。
だが、その瞳にあるのは安堵の光だった。
恵子が眠ったのを確認して、病室から香耶が出ると拓翔が廊下に立っていた。
「待っていてくれたんですか」
「ああ。君が心配で」
拓翔の手が、香耶の頬に触れる。
少し痛みを感じた。鏡を見ていないが、まだ腫れているのかもしれない。
「あいつをぶん殴っておけばよかった」
子どもじみた言い方をする拓翔が愛しくて、香耶はやっと穏やかな気持ちになれた。
「助けてくれて、ありがとう」