契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
「君はこの肩鎖関節あたりが敏感なんだな」
「くすぐったいわ。学生時代の試験みたい」
「ああ、全身の骨の名前を覚えたな」
ここが第七椎骨とつぶやきながらキスを続けたら、香耶が身をよじった。
白い背中を向けたままだが、すっかり目が覚めてしまったようだ。
「香耶」
名を呼んで、こんどは肩甲骨のあたりに軽く手を置いた。
それだけで彼女には伝わったようだ。
ゆっくりと素肌をさらしながら、こちらを向く。
伸ばしてきた両腕が拓翔の首すじに巻きついて、柔らかな胸と心地よい重みが乗ってくる。
「もう一度、いいか」
ゆっくりとうなずいて、香耶の唇が弧を描いた。
香耶の体を何度味わっても足りないし、満たされない。
「君を誰にも渡さない」
「拓翔さん」
「君が生きていく場所は、俺の隣だけだ」
言葉では言い表せないくらい、君を愛している。
出会った日はこんな関係になるなんて思ってもいなかった。
拓翔と香耶は激しく肌を重ねながら、ふたりだけの世界に溺れていった。