契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
窮地に陥った古泉製薬に、敵対している製薬会社が買収を仕掛けてきた。
父はオタオタするばかりだし、役員会も相手がライバルだけにどうするか紛糾したらしい。
買収案を受け入れることもできずに困っていたところ、援助しようという申し出があった。
『太田ヘルスケアホールディングス』という、医療全般を扱う大きな会社を経営している太田家からだ。
条件のいい吸収合併、いわゆるホワイトナイトとして古泉製薬を守ってくれるという。
父はすぐにその話に飛びついた。
いくつかの合併条件の中に、両家の結びつきを強くするため太田家の長男の洸太郎に古泉家の娘を嫁がせることも含まれていた。
洸太郎は太田ヘルスケアホールディングスを継ぐ予定だが、今は外資系商社で経験を積んでいるという。
ひとりで暮らしていた香耶が久しぶりに父に呼ばれて屋敷に戻ると、縁談についての話し合いだった。
「私がお嫁に行くわ」
大学卒業間近の香耶ではなく、まだ大学二年生だった麻友が名乗り出た。