契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
「洸太郎さんは商社にお勤めで、海外赴任もあるんでしょ。外語大に通っている私がぴったりだと思うの」
香耶は黙って成り行きを見守っていたが、父も義母も長女は眼中にないらしい。
麻友を嫁に出すのは寂しいとブツブツ言っていたが、合併が決まっている以上、条件は守らなくてはいけない。
「麻友は美人で優秀だから、太田家の跡継ぎの洸太郎さんにふさわしいわ」
そう義母が言うと、父も納得したようだ。
「香耶じゃあ、洸太郎君と並んだら見劣りするだろうな」
父や義母は相手のことをよく知っているらしく、香耶では不釣り合いだと決めつける。
ふたりとも以前から麻友に古泉家を継がせると言っていたから、嫁に出してどうする気だろう。
ふとそんなことを思ったが、口にはしなかった。
香耶は青葉大学病院への就職も決まっているから、麻友が嫁いでくれるなら大助かりだ。
「おめでとう、麻友。幸せになってね」
香耶は心から麻友を祝福した。
「まかせて。洸太郎さんのハートもつかんでみせるわ」
麻友はかなり自信があるようだ。
家にとっても会社にとっても、もちろん香耶にとっても最高の選択になるはずだった。