契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
誤解から始まった
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東京都内には大病院がいくつもあるが、青葉大学病院もそのひとつだ。
明治時代に設立された公立病院と青葉医学校が元になった歴史ある病院で、現在は高度救命救急センターに指定されているから常に医療の最前線にたっている。
森谷拓翔は三十歳。青葉大学の医学部を卒業して、この大学病院に勤めている。
拓翔の実家は都内で総合病院を経営しているが、救急科専門医を目指した拓翔は二年間の初期研修ではすべての診療科を経験して実績を積み、三年間の専門研修を受けたあと専門医の試験に合格して一年が過ぎたところだ。
拓翔が所属する救命救急科では、心臓疾患や脳卒中から外傷や熱傷まで、さまざまな症状の患者を受け入れている。
医師もそれに対応できる力を持つ者ばかりが集められているが、特に青葉大学病院では小児救命救急に力を入れていて、急性疾患の幼児や重症の子を持つ親からは頼りにされている場所でもある。
つまり拓翔の働いている場所は、毎日とても忙しい。